大庭みゆき氏コラム【私の快適性×窓】2一覧へもどる
≪プロフィール≫
株式会社 環境エネルギー総合研究所 代表取締役所長 大庭みゆき氏
財団法人省エネルギーセンター勤務を経て平成10年、株式会社環境エネルギー総合研究所を設立しました。「生活者の視点でフィナンシャルにエネルギーを考える」をモットーに、家庭を中心としたエネルギー関連調査、省工ネアドバイスを行っています。納得できる暮らしの質の向上にこだわる住宅などの研究にも注力されています。 エネルギー関係のエンジニアであり主婦でもある大庭氏に今月から4回に分けて、女性の視点とエンジニアの視点の両方から様々な角度で「窓」についてお話いただきます。
株式会社 環境エネルギー総合研究所 http://www.eer.co.jp/
【第二回】窓×やすらぎ
窓には色々な顔がある。
透明な窓ガラスは、家の中と外の区切りを取り払います。
ガラスによって空間は区切られますが、目で見る「景観」は連続しているので、外との一体感や広がりを感じることができます。キッチンに窓があると料理をしながら外の景色を眺めることができます。お隣の窓辺に飾られた花や建物の上に広がる空、雨に濡れた庭の風情などをガラス越しに見ることは、日々の暮らしの中での季節を感じられる、ちょっとした安らぎの時間です。
その一方で、窓は熱の出入り口にもなっています。秋の小春日和の日差しの暖かさにやすらぎを感じることもできますが、結露が一番できやすい寒い場所にもなっています。そんな窓を通して感じる““やすらぎ””を考えてみました。
(1)1/f ゆらぎ
蛍光灯の光とロウソクの光、扇風機の風と自然の風、水道から流れる水の音と小川のせせらぎ、あなたはどちらにやすらぎを感じますか?ロウソクの炎や自然の風、小川のせせらぎ等には1/f ゆらぎと言われる不規則な動き(ゆらぎ)が含まれています。
最も有名な1/f ゆらぎは人間の心拍のリズムです。またモーツアルト等のクラッシク音楽には多くの1/f ゆらぎが含まれていると言われています。1/f ゆらぎは自然現象の中に多く含まれています。“窓”を通して木漏れ日や葉ずれ等を眺めるだけでちょっとしたやすらぎを感じることができます。
自宅やオフィス、学校の窓からそんな1/f ゆらぎを感じる自然を探してみませんか?
(2)当世お風呂事情
日本人は昔からお風呂大好きです。若年層を中心とするシャワー派とシニア世代が好む浴槽入浴派のいずれもが、入浴には単なる体の洗浄というだけではなく「リラックス」や「リフレッシュ」を求めています。ある調査によると日本人の平均入浴時間は約30 分で、その内の半分約15 分間浴槽に浸かっているそうです。平日の起床在宅時間(家にいて起きている時間)は約8 時間15 分(NHK 放送文化研究所2010 年国民生活時間調査)と言われているので、在宅時間の約6%(有職者は約8%)を浴室で過ごしていることになります。
そんなに長くいる大好きな浴室ですが、昨年弊社で行った調査によると住宅の不満の第3位が「浴室が寒い」(約3割の人が浴室が寒いと回答)でした。戸建住宅では浴室への不満が全体の約4 割程度までありました。
ではどうして浴室は寒いのでしょうか?その原因の一つが方角です。浴室が南側にある住宅は少なく北向き等に設置されています。
もう一つの原因が浴室の“窓”です。浴室の窓の断熱性能が低いと浴室が寒くなります。熱は温度の高い方から低い方に流れます。また温度差が大きいほど早く大量の熱が流れます。お風呂のお湯の温度と浴室窓温度の差が大きいほど窓から熱が流れて行くのです。これによってお湯が冷めやすくなり沸かし直しの回数が増える可能性があります。
また東京都健康長寿医療センター研究所によると、2011 年には約1 万7,000 人もの人々がヒートショックに関連した入浴中急死をしたとみられ、その数は交通事故による死亡者数(4,611 人)を大きく上回っています。特に外気温が低くなる12 月から1 月にかけて、入浴中に心肺機能停止となる人が、もっとも少ない8 月のおよそ11 倍に急増しています。
やすらぎを得るための楽しいお風呂でのこのような事故を防ぐためにも、窓の断熱強化は大切です。特に入浴を楽しみにしている高齢者の方には暖かい浴室は何者にも代え難いものです。
実は私の自宅の浴室にも窓があり、単板ガラスだったので冬はシャワーを流しっぱなしにしていないと寒くていられませんでした。それを高断熱ガラスに変えたところ、驚くことに浴室に湯気が見えるようになりました。リーズナブルな費用で短い時間で(2~3時間)、こんな暖かさが得られ、大満足です。
ご両親へのプレゼントに““暖かい窓ガラス””のプレゼントは如何ですか?
▽コラム第3回はこちら▽